Session 9
(背景) 現在の「留学」在留資格者数は30万人に達し、約半数が女性で、そのほとんどが15歳から49歳の生殖年齢期で、日本滞在中に妊娠・出産する可能性がある。留学生が予定外の妊娠をした場合、学校を休みがちになったり、出産のために留学を中断して帰国せざるを得なくなったりすることがある。休学できてもアルバイトができなくなったり、奨学金の給付を休止されたりと、経済的にも精神的にも追い詰められる。留学生らが妊娠によって窮地に追い込まれてしまうのは、出身国と日本では、避妊法や中絶法などリプロダクティブ・ヘルス・サービスや出産や育児を支援する制度が異なること、また、来日後に必要なサービスにアクセスできていないためと考えられる。留学生受け入れ校の教職員は、生活や人間関係の相談も受けやすい立場にあるため、正しい情報の提供ができれば、留学生もライフプランを考えて予定外の妊娠を防ぎ、日本での学修を満了できると考えられる。 (セッションの構成) 本セッションでは、模擬講義とケーススタディを行う。まず、セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(Sexual and Reproductive Health and Rights: SRHR)の概念を確認し、日本ではSRHRが十分に普及していないために、留学生であっても、他国ではさほど問題にならない妊娠・出産によって困難に直面する現状について報告する。発表者研究グループは、留学生にとって必要な情報を提供する性教育教材を制作しており、その内容は、4つのパートで構成され、①妊娠葛藤期②避妊・中絶のルール ③出産と育児④相談窓口と各国語啓発動画などの情報を含む。学習者は、避妊、中絶、出産の3つの事例をもとに話し合うことで、内容を理解し、授業後にはライフプランを考えてリスクを回避する行動ができるようになることを目指す。本講義では、本教材を使用しながら、留学生が就学を満了するために知っておくべき日本の避妊・中絶の選択肢、注意すべき薬機法、子どもの在留資格、出産・育児の際に利用できる制度やサービス、各種保険と休業補償の条件などの必要情報を紹介する。ケーススタディでは、小グループごとに留学生の妊娠事例について話し合い、彼女らを取り巻く状況の問題点と相談されたらどう行動すべきかについてディスカッションし、適切な対応方法を考える。最後にグループごとに出された意見や感想の発表と教材へのフィードバックを行う。
Session 8
日本で2020年初頭から始まった新型コロナウイルス感染症の流行は、日本から海外に留学する学生の数にも大きな影響を与えました。それから4年ほどが経過してパンデミックが落ち着いた今、一時は大幅な減少を見せていた日本からの派遣留学生の数に回復の兆しがみえてきました。昨年は、岸田政権が2033年までの目標として、日本人留学生を50万人送り出すことを表明しています。こうした政策の後押しを受けて、留学生の数が増えていけば、その留学の質も担保していくことが求められるようになるでしょう。 こうした状況において、日本の大学等で留学生の送り出しを担当する私たちは、留学の量だけでなく質も高めるために、何にどう取り組んでいったらよいのでしょうか。本セッションを担当する私たちは、派遣留学の質を高めるための研究にこれまで取り組んできました。具体的には、留学前から帰国後に至るまで派遣留学生を一貫して支援するための教育的トータルサポートプログラムを開発し実践することを試みてきました。 本セッションでは、私たちの一連の研究の中から、海外留学を終えて帰国した学生に対するフォローアップに焦点を当てます。海外留学のスタートアップ(つまり、海外留学前の準備教育)については各大学等で留学説明会・オリエンテーションや語学学習など、行き届いた対応がされています。これに対して、海外留学のフォローアップ(つまり、帰国後のケアとキャリア形成の支援)に関しては、研究の蓄積が比較的少なく、教育的サポートのバリエーションも開発途上にあることが指摘できます。しかし海外留学の成果は、フォローアップによってさらに確実なものとすることができ、次のキャリアに着実に展開させていくことも可能になります。例えば、帰国後に留学経験を言語化することにより、自分が留学で何を体験したり学んだりしたのかを明確に理解できるようになります。さらに、留学経験者同士で集うことで、心情共有による安堵感と留学経験への気づきが得られ、次のキャリアへの行動化が促進されるといった、情緒・認知・行動の3側面にわたる効果も得られます。すなわち、留学には「予習」だけでなく、「復習」も欠かせないということです。 このセッションでは、これまでの私たちの「ポスト留学」に関する教育実践について、これまでの研究の動向を踏まえながら報告します。また、発表者が2022年度から担当している講義「海外留学フォローアップ演習」についても、受講した学生の反応を含めて概要を紹介します。参加者のみなさまとは、それぞれのご所属先における「ポスト留学」のケアやキャリア形成に関する取り組みについて、情報交換や意見の共有を行い、その課題について掘り下げていきます。これにより、海外留学の「質」を保証するための、新しいアイデアや戦略を生み出すための機会を提供したいと考えています。
Session 7
J-MIRAI(教育未来創造会議第二次提言)で、オンライン型国際教育の有機的な取り込みが、次世代の大学が行う国際教育の在り方として推奨されています。本セッションでは、COIL/VE等をはじめとしたデジタル技術やICTを活用したバーチャル空間での交流学習を、渡航留学や海外研修などのモビリティの活動と有機的に併用する「Blended Mobility」を次世代の国際教育の実践モデルとして考えていきたいと思います。 欧州では2018年からこの概念の導入が始まり、コロナ禍を経て、2021-2027年のエラスムスプラス事業でもBlended Mobility は助成対象として位置づけられています。Blended Mobilityの概念が波及すれば、学生自身が主体的に自身の学びプロセスをカスタム設計することで、より多様な学生層が国際交流学習体験を在学中に経験できるようになります。Blended Mobilityを理解する上で重要な概念として、①COIL/Virtual Exchange、②Virtual Mobility、③JV-Campusのようなopen education resourceの活用について考えます。また、このような新しい学び方がそもそも「なぜ」「これから」必要なのか、Education 4.0の到来についても考えていきたいと思います。 セッションの後半で、Blended Mobilityの設計を考える上で、有機的な融合を前提とした上でデザインするモビリティ(留学)プログラムを、参加者の所属する教育機関の学生層を具体的にイメージして企画し、互いにフィードバックを行うといったミニ・ワークショップ活動を盛り込んだセッションとなります。アクティブな参加を必要とするセッションです! Organic incorporation of online-based international education is recommended in J-MIRAI (the second proposal of the Japan Council for the Creation of the Future of Education) as a way of international education conducted by universities in the next generation. In this session, …
Session 6
2000年代後半の日本人留学者数の減少を契機として、日本社会では「グローバル人材」の育成が目指されるようになりました。各大学では数値目標の設定や留学プログラムの開発など、留学促進を目指した様々な取り組みが実施されていることかと思います。こうしたなかで、意欲さえあれば「誰でも留学できるようになった」という「留学の大衆化」はますます自明視されるようになっています。 一方で、日本を除くほぼすべての国や地域では、留学意欲・経験と家庭環境が密接に関連していることが明らかにされています。それでは、日本人の海外留学にはいかなる格差が、なぜ、存在しているのでしょうか。また、現代の日本社会において、社会的・学術的にも格差や貧困、不平等に対する注目が高まっているなかで、大学における国際教育交流担当者はいかなる役割が求められているのでしょうか。 本セッションでは、私がこれまで取り組んできた研究から、日本人の留学をめぐる格差の実態やそのメカニズムをご紹介します。そのうえで、留学をめぐる階層格差と社会的公正という観点から、大学としての対応や国際教育交流担当者に求められる役割について、参加者のみなさまと一緒に考えたいと思います。
Session 5
大学は海外派遣留学の本格的な再開に伴い、多様なリスクに対していかに備えるか、改めて危機管理への関心が高まっています。国境を越え拡大する感染症はもちろんのこと、心身の不調、デモや紛争といった治安情勢、地震などの自然災害、そして突発的に起きた事故・事件に至るまで、大学はあらゆる危機事象を想定し、最大限の方策を講じなければなりません。また昨今ではSNSの発展に伴い、リスク事案がどこで発生しようともニュースが瞬時に世界中を駆け巡るため、大学にはこれまで以上の即応性・的確性も求められています。さらに保護者とのコミュニケーションも欠かせません。 本セッションは、こうした今日的課題の中、大学で留学交流の危機管理の第一線に携わる教職員を招き、それぞれの大学における体制構築のプロセス、危機管理会社や保険会社との連携、そして危機対応の実例などの紹介を通じて、参加者の知識の習得および実践力の養成を目的とします。また、業務従事者がどのような課題や不安を抱えているのかを共有し、参加者と共に議論することを通じて、大学側の危機管理に関する視野を広げます。 本セッションは、新たに大学で留学業務や危機管理業務に携わることになった教職員や、この数年間の「空白期間」で業務をスムーズに継承できなかった方を主な対象とした初級者向けのプログラムですが、関心のある方はどなたでもご参加いただけます。大学が直面する様々な課題には一概に適用できる正解はないものの、「より確からしい」結論に迫るために、このセッションで提供されるアプローチや他大学の参加者とのネットワークが、前進するための有益な手段となることを期待しています。
Session 4
大学での学びは、学習者にとっては本来、小中高で積み上げた学びの先にあるものですが、大学教育に関わる教職員にとって、初等中等教育の急激な変化についての情報に接する機会は多くありません。 本セッションでは、まず、近年の初等中等教育の政策動向について紹介し、「主体的・対話的で深い学び」という言葉に象徴されるような新たな学びに大きくシフトしている学校現場の状況を捉えつつ、立命館学園附属校(小中高)での国際教育の事例を紹介していきます。立命館学園の各附属校では、附属校である強みを生かして多様な国際教育の実践に取り組んできました。その成果と課題点について、大学教育への接続という観点から議論しつつ、参加者間でのディスカッションや質疑応答を通して、私たちが出会う大学1年生の一人ひとりの多様な国際教育経験を理解し、「学習者像のアップデート」を図ります。
Session 3
「グローバル人材育成推進事業」、「スーパーグローバル大学創成支援事業SGU」、毎年の「大学の世界展開力強化事業」から、今年度の「ソーシャルインパクト創出支援事業」、またそのバックボーンとなっているJ-MIRAIまで、教育プログラムの実施回数/派遣・受入数(=アウトプット)がこれら事業の主たる評価基準となっています。 これらの事業を申請、計画し、また実際に実施する過程で、彼ら/彼女ら個々人と実際に接してきた「現場」の教職員は、「経験から実感」として、事業による教育機会提供が、学生に大きな影響を与えてきたことを実感しています。他方、参加者の変化/学びの「現場」に接していない、文科省、大学執行部、JASSO(短期プログラム奨学金がなくなって困っておられませんか?)に、どのようにこれらの変化を説明/証明すれば良いのでしょうか。 一方で「現場」の教職員は、教育プログラムの学習成果とは何であったのを明確に説明できてこなかったのではないでしょうか。異文化に関する知識の取得?また、変化したのは、いわゆる「Global/Intercultural Competency」だけだったでしょうか。参加した学生全員が望ましい方向に変化したでしょうか(夏目漱石の例は?)。 このセッションでは、学習成果の可視化という視点から、プログラム終了後の満足度調査の次のステージとして、プログラム前後の調査・測定と比較を通じた、より信頼性を伴った調査手法の採用、調査結果を利用して学習者にフィードバックを行う教育的介入の可能性について紹介します。 1. 上記のようなアウトカムに基づくアプローチを採用する際に考慮すべき事項 ・客観的尺度導入の可能性 ・調査・測定対象(eg. Global/Intercultural Competency)の定義とは ・時間的/財政的/リソースによる制約にどのように対処するのか ・調査・測定結果をどのように活用(教育・報告・FDなど)できるか ・継続的な実施の重要性 2. アウトカム測定に関する概念整理/利用可能なツールの特徴紹介 ・直接評価/間接評価 ・アンケート/満足度調査 ・ルーブリック ・JAOS、PROG、SRSA、GPS-Academic、BEVIなど
Session 2
本セッションでは、留学生の入国から日本での就職までを見据えた日本語教育のニーズを知り、大学は何ができるのかを各参加者の所属する教育機関で考えられるよう整理することを目的としています。 すでに私立大学の50%が定員未充足と言われ、大学院においては都市部の国立大学でさえも留学生なしでは、すでに成立しなくなっているのが現状です。このような状況下、2033年外国人留学生40万人という数字も政府より示され、多くの大学が留学生の受入れを拡大していくことは時代の潮流と言えます。 一方で、大学の生き残り策として、強引に留学生数を増加させたことによって在籍・在留管理問題等を引き起こしてきたことも周知の事実です。さらに、学修支援・キャリア支援の面でも多くの課題を抱えていることが報告されています。 このような状況でポイントとなるのが、日本語教育とそれをどのように大学学部もしくは大学院での学びと接続・連携をさせていくかです。 本セッションでは、日本語教育と大学学部・大学院での学びの連携にあたり、大学が設置する日本語教育機関である留学生別科、日本語教育センター(以下、別科等)に着目します。まず、留学生別科等の概要とそれらが直面している「日本語教育認定法」への対応について概観します。次に、大学の視点から、日本語教育と大学学部・研究科への接続・連携の事例について紹介します。そして、留学生別科等から学部・大学院での学びへの接続、キャリア支援までを見据えた教育課程を提案します。最後にフロアを交えて留学生40万人計画時代の日本語教育と大学学部・大学院の連携についての具体的方策について議論したいと思います。
特別セッションII | Special Session II
趣旨 | Summary 「大学の国際化促進フォーラム」特別セッション Japan Forum for Internationalization of Universities Special Session 「大学の国際化が生み出すソーシャル・インパクト: JVCと大学の国際化促進フォーラムのネクスト・ヴィジョン」 The Social Impact of University Internationalization: The Next Vision of Japan Virtual Campus (JV-Campus) and Japan Forum for Internationalization of Universities 開催日時 Date and Time:8月8日(木) (13:00-15:00), Thursday, August 8 (13:00-15:00) 司会 Facilitator:山下範久 Norihisa YAMASHITA | 学校法人 立命館 常務理事(企画担当)・国際連携室長 グローバル教養学部教授 Executive Trustee …
特別セッションⅠ | Special Session I
趣旨 | Summary 「国際教育が牽引するダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン」 開催日時 Date and Time:8月7日(水) (14:20-15:20), Wednesday, August 7 (14:20-15:20) 基調講演:「多様性を尊重するという曖昧さ: 異文化感受性発達理論からひも解く」 ダイバーシティ・エクイティ・インクージョン(DEI)という言葉は、日本においてもさまざまな文脈で語られるようになりました。最近ではDEIの推進を社会的使命として掲げる企業・高等教育機関等も増えています。そこで語られる理念(例: 立命館大学D&I 総長声明)は、私たち国際教育に関わる教職員が目指してきた教育観と親和性の高いものでもあります。 今回の基調講演およびパネルディスカッションでは、DEIの考え方を国際教育の文脈から捉え直すことを試みます。基調講演にはメーカー亜希子氏(Principal, Interculturalist, LLC)をお迎えし、異文化感受性発達理論の観点から「多様性を尊重する」という表現のあいまいさをひも解いていただきます。パネルディスカッションでは、基調講演の内容を国際教育実践にひきつけて議論し、DEIにおける国際教育関係者の役割について考察していきます。 ※特別セッションⅠは、対面での実施に加えて、オンライン(Zoom)でも無料で配信いたします。 詳しい情報は、参加登録後にご案内いたします。 登壇者 | Guest Speaker メーカー亜希子 Akiko MAEKER インターカルチュラリスト プリンシパル Principal, Interculturalist, LLC パネルディスカッション登壇者 | Panel Discussion Speakers ファシリテーター Facilitator: 堀江未来 立命館大学グローバル教養学部 教授 | Miki HORIE, Professor, College of Global Liberal Arts, Ritsumeikan University 登壇者 …
