Category: Reports 2021
8月26日(木) 基調講演(第一部)のご報告 (Report)
8月26日(木)基調講演(第一部)「国際教育の本質的な価値・意義を問う」報告書 発表者(発表順) 渡邉誠(千葉大学副学長 教育・国際担当) 渡部カンコロンゴ清花(NPO法人WELgee 代表理事) 竹内上人(マッケン・キャリアコンサルタンツ株式会社 代表取締役) 研修初日の午後、「国際教育の本質的な価値・意義を問う」をテーマに基調講演第一部が行われ、千葉大学副学長の渡邉誠さん、NPO法人WELgee代表理事の渡部カンコロンゴ清花さん、マッケン・キャリアコンサルタンツ株式会社代表取締役の竹内上人さんが登壇されました。 まず、渡邉さんに千葉大学の国際化についてお話をいただきました。千葉大学では昨年より、学部学生・大学院生ともに在学中一度は留学する、エンジンというプログラムが開始されました。コロナ禍で学生の現地派遣が困難な状況下でも、英国・ヨーク大学等とオンラインイベントを開催し、今夏は734名の学生が参加しています。今後はオンラインを上手く利用し、多種多様で柔軟なプログラムを行うことを目指しているそうです。続いて、長年人事の実務に携わり、日本の雇用現場を見つめてきた竹内さんからは、現代社会で求められる人材の育成に関し、高等教育に対する提言がなされました。知識や技能の習得のみならず、自己のパーソナリティを理解し、他者との協働においてそれを効果的にマネジメントできる人間性の涵養が鍵になるとのことです。また、日本人学生・留学生ともに安定した社会参画を果たすための国際教育について、日本的雇用・評価システムに対する理解促進、そして企業との橋渡しとして恒常的に機能しうる大学人事制度の再整備など課題を指摘されました。渡部さんは、大学生の頃バングラデシュの紛争地を訪れて感じた「国家が守らない・守れない人たちはどう生きていくのか」という疑問を自身の原点と語り、個性を秘めた「人材」としての難民が日本社会と響きあう可能性を主張しました。国際教育の観点からは、鮮烈なVUCAを経験した難民は、日本人学生にとって自己を問い直し、目を開かせてくれる存在であると述べ、双方の学びあいの意義を訴えました。 Q&Aセッションでは、参加者から「コロナ禍になってオンラインで留学に行けるようになったので現地留学の意味が薄れているのではないか」という意見が出ました。これに対して渡邉さんは、見聞を得るための留学はオンラインでも十分かもしれないが、実際に現地に行かないとわからないことは沢山あり、また学生が専門性を高めるために留学をするなら現地に行くことが重要であると述べられました。また、多様な背景をもつ留学生や難民が日本で就労するための支援についての議論では、竹内さん、渡部さんともに入社後も続く長期的な伴走体制の重要性を強調しました。特に難民の就労支援について、竹内さんからは、彼らが教育を通して難民から「脱皮」し、日本社会の担い手たるレディネスを身につけたと証明しうる仕組みがあればとの提案もなされています。同時に、彼ら自身が人材価値を高めて企業を選別していく眼をもつことの重要性を指摘し、言語の壁を人間的資質という形で乗り越えられるようなエンパワメントこそ国際教育に要請されるものと語られました。一方渡部さんは、留学を含め国際教育から学びたいと願う学生の気持ちが、単位認定など大学のシステムに阻まれることがあるのは残念だと指摘し、彼らの望みと学びへの挑戦を保障するフレキシブルな対応が大学に求められると言及しました。 日本らしい教育をより海外に発信していくために、今後は学部間、さらには大学の垣根を超えることが重要です。その中で、大学間で競争をしていくのではなく、各々の大学の強みや特性を生かし共創や協創に繋げていく必要があるのではないかと感じました。 報告者 高山美櫻 (東洋大学国際学部) 湊洵菜(東北大学文学部)
8月27日(金) Workshop Fのご報告 (Report)
「ポストコロナ期で活用するCOIL型教育実践—新しい国際教育のために—」報告書 発表者 池田佳子(関西大学国際部教授) Don Bysouth(関西大学) Sajjad Pouromid(関西大学) Jiun-Yan Wu(関西大学) 国内のCOIL実践に先駆的な取り組みを果たしてきた関西大学IIGEから4名の講師が登壇し、COIL実践の具体的なステップについて、豊富な事例を交えてご紹介いただきました。 まず、池田講師からはコロナウイルスの感染拡大が世界の高等教育にもたらした影響として、デジタルテクノロジーの急速な普及と発展が指摘されました。学生のモビリティが制限される中、内なる国際化の一環としてICTを駆使して展開されるCOIL型教育実践に注目が集まる背景を説明し、協働学習を重視するCOILは、単なる留学の代替を目指すものではないと強調しました。続いて、Pouromid講師からはCOIL型授業の設計と実践における具体的なステップが紹介されました。まず、その準備段階においては連携機関を見つけ、教員・学生がより良く教授・学習するための目標と成果をそれぞれ設定し、形式やツールを選定することが求められます。実践においては、学生個人の集まりが相互関係、そして共通のゴールに向かう協働関係へとその結びつきを発展させられるような授業のデザイン、教育介入が必要であるとのことです。さらに、COIL型授業では学生が多くの偶発学習を経験すると期待されることからも振り返りの重要性を強調し、深い内省は自身が何を学び得たのかを自覚する助けにもなると述べました。その学び合いを創出するためには、世界各国に点在する学生が協働できる環境をテクノロジーにより整備する必要があると指摘しており、COIL実践で必要な学習ツールを一本化できるよう開発されたWebインターフェース、Immerse Uの活用も紹介されました。そして、Bysouth講師からはCOILの評価についてのお話をいただきました。第一に求められるのは評価の妥当性を保障することだと指摘します。授業のゴールを明確にすることが適切な評価につながると述べ、先に言及された目標設定の重要性が再度強調される形となりました。また、スキルや知識を測定する従来的なテスト中心の評価ではなく、パフォーマンスと成果の質に目を向けた代替評価(alternative assessment)の必要性を訴えています。その新しい評価を取り入れるための丁寧なガイドラインと、実際に国内外で活用される複数の方法も示されました。最後に、Wu講師とBysouth講師から関西大学のCOIL型教育のグッドプラクティスが共有され、3時間にわたるワークショップが幕を閉じました。 本ワークショップでは、Q&Aセッションやブレイクアウトルームでのディスカッションなど、双方向の交流機会も与えられていました。各教育機関・組織の実践例や課題を持ち寄り、COILのより良い実践について活発な議論が展開されました。それぞれが実情と向き合いながら、ウィズコロナ・ポストコロナ期の国際教育において試行錯誤を重ねる様子が伝わり、今後国内外の関係者がさらなる連携のもとで対応していくことが期待されます。 報告者 湊洵菜(東北大学文学部)
8月27日(金) Workshop Eのご報告 (Report)
「国際化は誰のために、何のために進めるのか?―国際化評価指標から考える―」報告書 発表者(発表順) 太田 浩 (一橋大学) 渡部 由紀(東北大学) 本ワークショップでは、各大学の国際化の現状を振り返りながら、大学の国際化のあり方とその評価について理解を深めることを目的として行われた。 まず初めに渡部氏より、高等教育の国際化の定義とそれに関わる概念についてレクチャーして頂きました。 その後、第一部のディスカッションでは、事前課題でご回答いただいた各大学の国際化の目的と戦略について議論し、アジアの調査の結果と比較しました。ディスカッションの内容としては、各大学の国際化の目的・戦略・評価方法の3点です。第二部では、53指標の中から重要度が高い国際化評価指標を5つ、重要度が低い指標を3つ、それぞれのグループごとに選出して頂き、国際化を強化するためにはどのような指標が有効なのか議論しました。全ての回答において、SIIEJワークショップ参加者、アジアの各大学の調査結果、そしてSGU内においてもタイプAとタイプBの間には結果に違いが生じました。これらの理由には、各大学や各国における状況により、国際化の目的や戦略に差異が生じること、また現場で働く方々と各大学の執行部との間に、目的や戦略の齟齬が生じていることが示唆できます。 最後に、太田氏よりEBPMとロジック・モデルについてご講演を頂いた。証拠に基づく政策立案(EBPM)の重要性と限界、ロジック・モデル内の「アウトプット」と「アウトカム」の識別や有効性、ロジック・モデルの事例等をご紹介して頂きました。まとめとして、全ての大学に通じる国際化のモデルは存在せず、ゴールは各大学が描き、独自のやり方で推進すべきとの意見を頂戴しました。 報告者 成毛楓(東洋大学国際学部)
8月27日(金) Workshop Dのご報告 (Report)
「外国学歴評価の手法『中国の学歴・資格評価の実践と課題』」報告書 発表者 白石勝己(公益財団法人アジア学生文化協会) 翁 文静(九州大学, アドミッションセンター) 李 明(大阪大学 グローバルイニシアティブ機構) 星明廣(公益財団法人アジア学生文化協会 国際教育支援事業部) 8月27日に開催されたワークショップDでは、まず前半に「外国学歴評価の手法:中国の学歴・資格評価の実践及び課題」をテーマとした講師陣によるプレゼンテーションが行われ、後半では参加者が実際に学歴の模擬判定作業に取り組みました。 始めに白石勝己講師が本ワークショップの概要をご説明された後、翁文静講師が『中国の高等教育の概要とデジタル証明書の現状』について発表をされました。翁講師は、まず中国の学校教育制度及び高等教育の概要を紹介され、中国における大学及び大学院入試がどのようなものであるかを詳説されました。続いて、日本の教育機関向けに学歴・学位証書の認証サービスを提供している中国の機関を紹介され、それらの機関が発行するデジタル証明書等が日本の一部の大学・大学院の願書受付過程においてどのように利用されているかについて具体例を交えて説明されました。 その後、李明講師が、大阪大学における大学院入試改革事例を中心に、『中国人留学生の大学院入試における学歴資格評価の実践』に関する発表をされました。李講師はまず大学院レベルの留学生の受け入れに関わる大学側の問題点及び留学生側の問題点を指摘され、それらを解決するために大阪大学内に設置された「龍門窓口」の概要と具体的にどのような支援が教員や学生になされているのかについてご紹介下さいました。そして、龍門窓口が設置されたことにより期待される効果や課題についても述べられました。 休憩を挟んだ後半には、まず白石講師が実務として外国学歴・入学資格の判定の際に確認されている点や入学資格の判定・学修歴の認証が必要な理由、日本における大学入学資格の原則等について概括されました。続いて星明廣講師が『中等教育課程の学歴判定の考え方と手順』と題し、留学生の日本の大学入学資格の判定時に根拠となる法律や条文、施行規則、志願者が履修した課程の属性を調べる際の留意点等をご紹介下さいました。その後、星講師より参加者に、中国出身の志願者から提出されたものを模した卒業(見込み)証明書や成績証明書が配布され、参加者は小グループに分かれ、学歴・入学資格判定作業を実際に体験しました。星講師よりご教授いただいた留意点等を踏まえ、判定のために更に何を調べていく必要があるのかという点を話し合うことで、参加者が判定作業の複雑なプロセスへの理解を深めるワークショップとなりました。 報告者 T. K. (東洋大学)
8月27日(金) Workshop Cのご報告 (Report)
「客観的測定の結果の活用:グッドプラクティスの紹介」報告書 発表者 西谷元 (広島大学) 東矢光代 (琉球大学) 小早川裕子 (東洋大学) 蒙韫(韞)(新潟大学) 吉田千春(中央大学) 中村絵里(千葉大学) 横井幸子(大阪大学) 中野遼子(大阪大学) エィミーウィルソン(山口県立大学) 8月27日(金)に開催された本ワークショップの目的は、BEVIが各大学でどのように活用されているのかを報告していただくことでした。現在BEVIは30もの大学で利用されていますが、今回はBEVIを実際に利用した8大学から、BEVIを活用した調査・研究内容とその結果、今後の課題についてお話をいただきました。 BEVIは28項目の背景情報と185項目の質問項目があり、グループ間での比較、個人の比較、性別といったように大きい分野から小さい分野までさまざまな種類のもと分析ができるという利便性があり、この利便性は国際的な研究においても大いに役立ったことが見受けられました。 BEVIを実施することで、海外志向が強い学生同士でも一部には多様な文化や価値観の受け入れに高低の差があったという新たな発見があり、海外志向の学生が必ずしも異文化や価値観の受け入れに肯定的ではないことが分かりました。性別の違いからは、比較的女性の方が、海外志向が高いという結果もあり、比較調査において結果が見えやすい種類であると考えられました。また理系と文系という違いにおいても、グローバル・コンピテンシーの違いが明確に分かりました。こういった調査や研究結果から、グループ内での活動の組み合わせやグローバルへの関心を持つ方策の提案、プログラム改善に役立てることができるとの考えがありました。詳細な検証が行えるからこそ、学生の考えを、BEVIを通して知ることができ、教育研究において便利で有効なツールになるとのことでした。BEVIと独自のアンケートも組み合わせた調査も行うことで、より深い研究が行えるのではないかという意見もありました。一方で、課題もあげられました。受検時間に30分を要し手間がかかるというデメリットです。このデメリットのなくすためにどうしていくべきか、今後も話し合っていくことが必要になるだろうとのことでした。 このワークショップを通し、BEVIという分析ツールをはじめて知りました。細かいデータが収集できることは、正確な調査にもつながるという点において必要な研究方法だと思いました。なによりも、BEVIを通し、自分は他の人と比べどのような考えなのか、なにが違うのかというように、自分を知るきっかけになるのが収穫だと思いました。自分にとってのメリットになることを多くの人に知ってもらうために、学科全体として取り組むことや正しい指導、フィードバックが重要になっていくと私は考えました。もっと多くの人々に知ってもらう機会が増えることを期待しています。 報告者 赤尾菜々実(東洋大学国際学部国際地域学科)
8月26日(木) Workshop Aのご報告 (Report)
「留学/VE/COILのアウトカムの客観的測定」報告書 発表者 西谷 元(広島大学教授) 村澤 昌崇(広島大学高等教育研究開発センター) 8月26日に行われたワークショップAでは、「留学/VE/COILのアウトカムの客観的測定」をテーマに、広島大学の西谷元さん、村澤昌崇さんによる講演が行われました。 講義前半では西谷さんにより、留学の成果を客観的に診断するための心理テスト、BEVI (The Beliefs, Events, and Value Inventory)の概要や測定結果例についての説明がありました。事前に参加者に回答していただいていた事前アンケートでは、学生が参加する留学プログラムによりその目的が異なるため比較が困難であったり、客観的テストを使用している事例が少なく、参加した学生の語学力がどの程度伸びたか、あるいは学生の満足度でプログラムの有効性を図らざるを得なかったりするといった意見が寄せられていました。BEVIは信念・価値についての個人によるステートメントのデータの収集と分析を基にテストが作成されており、留学プログラムの効果を図る際によく使用される主観的アンケートとは異なり、より客観的なデータの収集が可能となっています。また、世界140カ国・2万人のデータが比較対象用のデータとしてBEVIでは収集されており、標準化されたデータから国際比較も可能と述べられました。西谷さんの講演後半では、実際に参加者が事前に受験したBEVIの結果を使用しながら、どのようなカテゴリーに分けてBEVIの結果を比較することができるのかについても説明されました。BEVIは全てオンラインで行われるため世界中どこにいても受験可能なだけでなく、今後は現在の英語・日本語版に加え、中国語・スペイン語版も開発されるとのことで、より使用範囲が広がっていくのではないかと感じました。 続いて講義後半では村澤さんにより、国際化、効果検証に関する講演が行われました。従来の国際化・留学に関わるエビデンスでは、収集したデータが不十分であったり、留学をした学生のみを追っていたりすることが問題であると述べられました。近年EBPM(Evidence-Based Policy Making: 根拠に基づいた政策形成)が普及しており、政策を遂行する際に狭義のエビデンスが求められるようになっています。EBPMでは因果関係を基にその質の高低が格付けされるという特徴から、反実仮想から結果を出す因果推論が核をなす分析手法になっています。しかし、因果を推定するために個人ではなく集団からデータを取る必要があり(ランダム化比較実験: RCT)、BEVIでもこの点が配慮されているそうです。講演最後には、学内に常時蓄積されるデータの活用の必要性や、それをBEVIと上手く併用することによりデータをさらに分析していくことが可能になると提言されました。 報告者 高山美櫻 (東洋大学国際学部)
8月26日(木) Session Dのご報告 (Report)
「留学生30万人計画のレビューとポスト30万人の展望と課題」報告書 発表者 太田 浩(一橋大学 教授) 二子石 優(一橋大学 博士後期課程) 本セッションは、留学生30万人計画について振り返り、ポスト30万人に向けた留学生受け入れの展望と課題を各参加者で考え、整理することを目的として行われました。 まず太田氏より、留学生30万人計画の政策的レビューを頂きました。「留学生30万人計画」骨子の概要によると、10万人計画のものと比べて、6省が連携しておこなっていることが強調されています。一方で、政府の留学生支援に関する予算は、2009年から減額され、日本人学生の海外留学支援へとシフトされました。 次に二子石氏より、日本学生支援機構統計資料を中心に、留学生の入学経路と卒業後の進路について、データ分析を元に解説して頂きました。入学経路の観点から述べると、海外からの直接入学は大学院においては顕著に増加しましたが、大学(学部)、専修学校においては、実数は増えましたが、割合は横ばい、もしくは低下していました。また、日本語教育機関・準備教育課程と専修学校において急増したことで、30万人計画の数値目標達成につながりました。卒業後の進路に関しては、帰国もしくは第3国への出国をする者は、専修学校修了者の場合は1割で、特に非漢字圏出身者の少なさが特徴的でありました。国内就職をする者は、日本語教育機関・準備教育課程からが増加し、大学院・大学からのそれと肩を並べるまでになりました。日本語教育機関・準備教育課程から、2018年度には7割強が国内進学をしていました。二子石氏の考察としましては、日本国内での長期に渡る日本語教育及び進学予備教育の必要性の増加、日本語教育機関・準備教育課程を進学準備教育強化の観点から留学生受入れ政策(施策)の中心に据えるべき、留学生の多様なニーズに応え得る日本語教育、進路指導が実施できる体制を構築すべきなどとありました。 その後、再び太田氏より、留学生受け入れにおける大学をめぐる問題について、お話いただきました。定員管理の厳格化により、日本人学生だけで定員が充足している大学は、留学生の受け入れに非積極的になる可能性が生じる為、収容定員外での受け入れや国公立大での授業料自由化の必要性が挙げられました。また、言語・質・連携の問題としては、国際化のもと、英語による授業と、日本での就職促進の為の日本語教育の両立の難しさが挙げられました。就職支援に関する政府の方向性は、日本国内での就職率を3割から5割へ向上させるとあり、留学生就職促進プログラムが行われ、大学と地方公共団体・民間団体が活発に活動しています。しかし、現実では、企業はダイバーシティ・共生という言葉を用いながらも、採用側は日本人化した留学生を求めているという齟齬が生じています。 終盤のディスカッションでは、正規・非正規生のバランスや中国人留学生に頼る状態から、異なるエリアの開拓といった、新たな一手の模索の必要性をご指摘いただきました。また、別の参加者からは、国内就職のための大学による日本語教育の試みの重要性や、授業料自由化による競争力への疑問等の意見を頂きました。 報告者 成毛 楓(東洋大学国際学部)
8月26日(木) Session Cのご報告 (Report)
「これからの国際交流と大学職員」 報告書 発表者: 赤松茂利(早稲田大学 国際部国際課) 石山昭彦(國學院大學 国際交流事務部) 宮澤文玄(学習院大学 学長室) 8月26日(木)に開催された本セッションでは、新型コロナウイルスの感染拡大が懸念され、オンラインが主流となってきている中で、オンラインを用いた国際交流の現状・課題、そして国際交流に関わる大学職員の行いや展開について、3人のスピーカーにレポートを行っていただいた。 まず赤松氏より、現在早稲田大学で行われているオンラインを用いた国際教育「Global Online Academic Learning (GOAL)」について、その取り組み内容と早稲田大学の国際部職員がどのような業務を行っているのかを報告していただいた。 「リアルな留学」か「オンラインを用いた国際教育」か、という対立を克服し、「どちらも」を実現するというコンセプトのもと、プロジェクトが進められている。具体的には、APRUやU21といった国際コンソーシアムや、北京大学(中国)などと連携し、様々なプログラムを展開している。また、アクションプラン(三ヵ年計画)を策定することによって、国際部の職員一人一人がGOALを「自分事」として捉え、取り組む試みを行っているそうである。さらには、どのようにPRを推進していくかが今後重要になっていく。 コロナウイルスによる環境の変化によって従来からの課題が改めて顕在化したが、変化を誘発し適応するという、大学が国際化を推進する本質も再確認できる。よって、国際交流に関わる職員には、外の視点から組織を批判的に見つめ、正しいビジョンを持ち、組織の慣性(Inertia)が働くメカニズムを理解し調和を図る能力が求められるとのことであった。 次に石山氏からオンラインを用いた短期語学留学は越境留学の「代替措置」となるのかという考察が報告された。従来の選択肢である越境型の短期留学は外国語力向上、情緒面・異文化感受性への効果があるという調査結果がある。また、2018年に留学した日本の大学生のうちおよそ3分の2が選択していることから、短期語学留学の質の維持、向上をなおざりにはできないと考える。 現在は消極的な選択肢であるオンラインでの実施について、効果の報告はまだ出揃っていないが、情緒面や異文化感受性については効果の予測が難しいが、語学力の向上はある程度期待できる。また、費用やアルバイト・部活といった理由により、越境型ではなくオンラインの需要があることアンケート結果からわかった。 よって、オンラインを用いた短期留学は越境留学の単なる「代替措置」ではなく、コロナ後もオプションにしていかなければいけないが、そのためにはモチベーションの維持や多様性のあるプログラムの形成、授業外でのコミュニティ形成といった課題も残っているとのことであった。 宮澤氏からは、一般社団法人大学行政管理学会(JUAM)の活動と今後の展開を中心に、大学の垣根を越えて国際交流活動に携わる意義について報告していただいた。これまでのJUAM関東地区研究会とRECSIEとの協働を始め、大学の国際交流や国際教育の新しい動きに対応するよう、職員が果たすべき役割と実践事例を幅広い視点から発表され、組織ミッション、ビジョンと職員個々人の能力開発との結びつきの重要性が述べられた。 また、9月のJUAM研究集会では諸外国における大学職員のジョブローテーションに関する考察を発表する予定であり、日本のメンバーシップ型の雇用システムや新卒一括採用、終身雇用制度などからの移行や、時代の変化に伴う大学職員の今後の働き方について、諸外国との比較を参考に改革に繋げる意義が大きいとのことである。その詳細については、JUAM内の新しい組織として「海外職員団体等調査・連携企画チーム」が発足され、国際的な視点で専門職団体と連携し、今後も取り組みを行うとのことであった。 最後に全体を通し、学生の立場である私にとって、やはり私自身も渡航型とオンラインではどうしても対立させて考えてしまっていた。オンライン型というものが最近では主流になってきてはいるが、国際交流や留学といった面で考えると、前例が少ないという点においても不安を抱えてしまう学生も多いのではないかと思った。 そういった学生の現状も大学職員には理解がされていて、時代の変化に適応しながら国際交流のプランを考え続けていることの理解を深めることができた。こういった活動を知ってもらうための広報活動の重要性が高まっていくのではないかと思う。こういった貴重な場に参加でき、有意義な時間となった。 報告者: 赤尾菜々実(東洋大学国際学部国際地域学科)
7 月 17日(土) のご報告 (Report)
7月17日(土) 特別セッション①「ワクチン接種拡大と学生交流:英語圏諸国の留学生受入れ最新情報」のご報告 発表者(発表順) 伊丹麻衣子 EF (Education First) Japan マーケティングディレクター Ben Bonjean EF Sydney Campus, Director of Operations 上奥由和 全研本社株式会社 取締役 (東証マザーズ上場) 一般財団法人海外留学推進協会 代表理事 一般社団法人海外留学協議会 (JAOS) 理事 一般社団法人 留学サービス審査機構 (J-CROSS) 参与 青島宏一郎 サンフランシスコ州立大学国際交流部、留学生サービス・リクルート担当アシスタントディレクター ドハティー祥子 CEO, ケルティックイングリッシュアカデミー English UK理事 モデレーター 松崎 久美 名古屋芸術大学、国際交流センター長 受講者感想 赤松茂利(早稲田大学) 7月17日(土)に開催された本セッションでは、新型コロナウイルスのワクチン接種の広がりを受けて留学交流に再開の兆しが見える英国、オーストラリア、カナダ、米国の四ヵ国を対象に、5人のゲストを現地からオンラインで繋ぎ、各国の大学および英語学校等での留学生の受入れ状況、ビザ制限、ワクチンポリシーなどの最新状況についてレポートを行っていただいた。 まず伊丹氏より、EF(Education First)が有する広範なネットワークを駆使して集められた北米、欧州、アジア等11ヵ国の入国条件、PCR検査の有無、入国後の隔離日数、隔離場所等の情報に関する網羅的な説明がなされ、セッションのオープニングに相応しい大局的な視座を与えていただいた。続いてEF Sydney CampusのBonjean氏から、オーストラリアの現状に関する詳細な報告がなされた。現地では初期段階で感染者数の封じ込めに成功した反面、ワクチン接種率が低いことが課題となっている(人口に占める2回目接種者は9%)。このような中、高等教育はオンラインを中心に実施されており、留学ビザ保有者の約60%は、依然として海外から授業にアクセスしている様子が語られた。Bonjean氏曰く、留学生に対する渡豪許可は2022年初頭以降になる見通しとのことであった。 次に、上奥氏より北米を対象とした発表があり、主に海外留学推進協会(SAA)を通じてアメリカ、カナダへ送り出した学生からの「生の声」を届けていただいた。大学によって多少の違いは認められるが、授業はオンラインとハイブリッドを軸にしながら、一部では対面(ラボや実験)が復活しており、学生はそれぞれの授業形態のメリット、デメリットと試行錯誤しながら向き合っている実態が語られた。また、各大学ではワクチン接種が進んでおり、希望者はほぼ打ち終わっている状況が報告された。SAAでは2020年10月に50名の学生の渡米を実現させ、2021年秋出発に向けてはアメリカ104名、マレーシア60名を含む計171名の留学準備を進めているとのことであった。 サンフランシスコ州立大学の青島氏からは、西海岸地域の大学の具体的な対応をレポートいただいた。曰く、同大学の留学生受け入れは疾病予防管理センター、国務省、州政府、大学システム(UC)や地方自治体の考えが複合的に絡み合い、規制決定がなされている。またワクチンポリシーに関しては、全米で578の大学がワクチン接種を必須とする方針を打ち出し、必須としない大学でも自主隔離やPCR検査を義務化するなど、大学によって様々な対策が講じられている現況を、UCバークレー校やスタンフォード大学などの実例も交えながらわかり易く解説していただいた。 最後に、ドハティー氏よりイギリスの状況をご報告いただいた。現地では1日の感染者数が40,000名を超えるものの、ワクチンの2回目接種率が65%に達しており、重症化ケースは顕著に減少していることから、イングランドを中心にマスク着用やソーシャルディスタンスの規制緩和・撤廃が進む方向性にある(ただしスコットランド、ウェールズ、北アイルランドはイングランドに比べて慎重姿勢)。さらに、現地大学を対象にしたアンケート調査を通じて、2021年9月以降の授業形態はオンラインを中心にしつつも60名以下の授業は対面に戻すなどの復調傾向にあることや、派遣留学に対しても前向きな検討が進んでいる状況を明らかとした。 2021年6月に文部科学省から日本人学生の長期(9か月以上)海外留学の再開方針が示される中、当セッションには190名を超える大学関係者や国際教育交流に携わる方々の参加があり、改めてこのトピックに対する大学人の関心の高さが伺い知れた。多くの学生を海外派遣する教育機関の一員として、迷いながらも改善の兆しが見える三大英語圏の留学政策に明るい未来を期待する一方で、依然として変化したゆたう各国の情勢に情報感度を高く保ち続け、様々な事態に対して柔軟に適合し実践を続ける難しさ、複雑さ、そしてその重要性を再認識する貴重な機会となった。 参加者の声(参加者アンケートより抜粋) • 通常の方法では入手できないアクチュアルな情報をご提供いただき、極めて参考になりました。 …
