「ポストコロナ期で活用するCOIL型教育実践—新しい国際教育のために—」報告書
発表者
池田佳子(関西大学国際部教授)
Don Bysouth(関西大学)
Sajjad Pouromid(関西大学)
Jiun-Yan Wu(関西大学)
国内のCOIL実践に先駆的な取り組みを果たしてきた関西大学IIGEから4名の講師が登壇し、COIL実践の具体的なステップについて、豊富な事例を交えてご紹介いただきました。
まず、池田講師からはコロナウイルスの感染拡大が世界の高等教育にもたらした影響として、デジタルテクノロジーの急速な普及と発展が指摘されました。学生のモビリティが制限される中、内なる国際化の一環としてICTを駆使して展開されるCOIL型教育実践に注目が集まる背景を説明し、協働学習を重視するCOILは、単なる留学の代替を目指すものではないと強調しました。続いて、Pouromid講師からはCOIL型授業の設計と実践における具体的なステップが紹介されました。まず、その準備段階においては連携機関を見つけ、教員・学生がより良く教授・学習するための目標と成果をそれぞれ設定し、形式やツールを選定することが求められます。実践においては、学生個人の集まりが相互関係、そして共通のゴールに向かう協働関係へとその結びつきを発展させられるような授業のデザイン、教育介入が必要であるとのことです。さらに、COIL型授業では学生が多くの偶発学習を経験すると期待されることからも振り返りの重要性を強調し、深い内省は自身が何を学び得たのかを自覚する助けにもなると述べました。その学び合いを創出するためには、世界各国に点在する学生が協働できる環境をテクノロジーにより整備する必要があると指摘しており、COIL実践で必要な学習ツールを一本化できるよう開発されたWebインターフェース、Immerse Uの活用も紹介されました。そして、Bysouth講師からはCOILの評価についてのお話をいただきました。第一に求められるのは評価の妥当性を保障することだと指摘します。授業のゴールを明確にすることが適切な評価につながると述べ、先に言及された目標設定の重要性が再度強調される形となりました。また、スキルや知識を測定する従来的なテスト中心の評価ではなく、パフォーマンスと成果の質に目を向けた代替評価(alternative assessment)の必要性を訴えています。その新しい評価を取り入れるための丁寧なガイドラインと、実際に国内外で活用される複数の方法も示されました。最後に、Wu講師とBysouth講師から関西大学のCOIL型教育のグッドプラクティスが共有され、3時間にわたるワークショップが幕を閉じました。
本ワークショップでは、Q&Aセッションやブレイクアウトルームでのディスカッションなど、双方向の交流機会も与えられていました。各教育機関・組織の実践例や課題を持ち寄り、COILのより良い実践について活発な議論が展開されました。それぞれが実情と向き合いながら、ウィズコロナ・ポストコロナ期の国際教育において試行錯誤を重ねる様子が伝わり、今後国内外の関係者がさらなる連携のもとで対応していくことが期待されます。
報告者
湊洵菜(東北大学文学部)