7 月 17日(土) のご報告 (Report)

7月17日(土) 特別セッション①「ワクチン接種拡大と学生交流:英語圏諸国の留学生受入れ最新情報」のご報告

発表者(発表順)
伊丹麻衣子
EF (Education First) Japan マーケティングディレクター

Ben Bonjean
EF Sydney Campus, Director of Operations

上奥由和
全研本社株式会社 取締役 (東証マザーズ上場)
一般財団法人海外留学推進協会 代表理事
一般社団法人海外留学協議会 (JAOS) 理事
一般社団法人 留学サービス審査機構 (J-CROSS) 参与

青島宏一郎
サンフランシスコ州立大学国際交流部、留学生サービス・リクルート担当アシスタントディレクター

ドハティー祥子
CEO, ケルティックイングリッシュアカデミー
English UK理事

モデレーター
松崎 久美  
名古屋芸術大学、国際交流センター長

受講者感想
赤松茂利(早稲田大学)

7月17日(土)に開催された本セッションでは、新型コロナウイルスのワクチン接種の広がりを受けて留学交流に再開の兆しが見える英国、オーストラリア、カナダ、米国の四ヵ国を対象に、5人のゲストを現地からオンラインで繋ぎ、各国の大学および英語学校等での留学生の受入れ状況、ビザ制限、ワクチンポリシーなどの最新状況についてレポートを行っていただいた。

まず伊丹氏より、EF(Education First)が有する広範なネットワークを駆使して集められた北米、欧州、アジア等11ヵ国の入国条件、PCR検査の有無、入国後の隔離日数、隔離場所等の情報に関する網羅的な説明がなされ、セッションのオープニングに相応しい大局的な視座を与えていただいた。続いてEF Sydney CampusのBonjean氏から、オーストラリアの現状に関する詳細な報告がなされた。現地では初期段階で感染者数の封じ込めに成功した反面、ワクチン接種率が低いことが課題となっている(人口に占める2回目接種者は9%)。このような中、高等教育はオンラインを中心に実施されており、留学ビザ保有者の約60%は、依然として海外から授業にアクセスしている様子が語られた。Bonjean氏曰く、留学生に対する渡豪許可は2022年初頭以降になる見通しとのことであった。

次に、上奥氏より北米を対象とした発表があり、主に海外留学推進協会(SAA)を通じてアメリカ、カナダへ送り出した学生からの「生の声」を届けていただいた。大学によって多少の違いは認められるが、授業はオンラインとハイブリッドを軸にしながら、一部では対面(ラボや実験)が復活しており、学生はそれぞれの授業形態のメリット、デメリットと試行錯誤しながら向き合っている実態が語られた。また、各大学ではワクチン接種が進んでおり、希望者はほぼ打ち終わっている状況が報告された。SAAでは2020年10月に50名の学生の渡米を実現させ、2021年秋出発に向けてはアメリカ104名、マレーシア60名を含む計171名の留学準備を進めているとのことであった。

サンフランシスコ州立大学の青島氏からは、西海岸地域の大学の具体的な対応をレポートいただいた。曰く、同大学の留学生受け入れは疾病予防管理センター、国務省、州政府、大学システム(UC)や地方自治体の考えが複合的に絡み合い、規制決定がなされている。またワクチンポリシーに関しては、全米で578の大学がワクチン接種を必須とする方針を打ち出し、必須としない大学でも自主隔離やPCR検査を義務化するなど、大学によって様々な対策が講じられている現況を、UCバークレー校やスタンフォード大学などの実例も交えながらわかり易く解説していただいた。

最後に、ドハティー氏よりイギリスの状況をご報告いただいた。現地では1日の感染者数が40,000名を超えるものの、ワクチンの2回目接種率が65%に達しており、重症化ケースは顕著に減少していることから、イングランドを中心にマスク着用やソーシャルディスタンスの規制緩和・撤廃が進む方向性にある(ただしスコットランド、ウェールズ、北アイルランドはイングランドに比べて慎重姿勢)。さらに、現地大学を対象にしたアンケート調査を通じて、2021年9月以降の授業形態はオンラインを中心にしつつも60名以下の授業は対面に戻すなどの復調傾向にあることや、派遣留学に対しても前向きな検討が進んでいる状況を明らかとした。

2021年6月に文部科学省から日本人学生の長期(9か月以上)海外留学の再開方針が示される中、当セッションには190名を超える大学関係者や国際教育交流に携わる方々の参加があり、改めてこのトピックに対する大学人の関心の高さが伺い知れた。多くの学生を海外派遣する教育機関の一員として、迷いながらも改善の兆しが見える三大英語圏の留学政策に明るい未来を期待する一方で、依然として変化したゆたう各国の情勢に情報感度を高く保ち続け、様々な事態に対して柔軟に適合し実践を続ける難しさ、複雑さ、そしてその重要性を再認識する貴重な機会となった。

参加者の声(参加者アンケートより抜粋)
• 通常の方法では入手できないアクチュアルな情報をご提供いただき、極めて参考になりました。
• なかなか接することのできない正しい現地情報を教えていただき、質問にも丁寧に答えていただき大変感謝しております。
• コロナの観点から留学の話はなかなか聞けないので新鮮でした。
• 各国の最新の状況が分かり大変役に立ちました。ワクチン接種の今後の対応が非常に気になっております。
• 少しずつ希望が見えてきた気がします。


セッション② 「留学の成果を最大化するための学生ネットワーク ―トビタテハウス6年の軌跡から学ぶー」のご報告

トビタテハウスの立ち上げに携わった中川 瑛さん、
現在トビタテハウスでプロジェクトディレクターを勤めている 中山健太さん
トビタテハウスに以前住んでおり、卒業後記者として働く馬本寛子さん
の3名を招き「留学の成果を最大化するための学生ネットワーク ートビタテハウス6年の軌跡から学ぶー」の基調講演が実施されました。

講演ではまず、トビタテハウスの立ち上げの経緯を中川さんからお話ししいただき、

その後現トビタテハウスメンバーである中山さんからトビタテハウスの事業展開について
紹介いただきました。
現在は都内で5棟、金沢・京都でも展開をし、また
トビタテハウス内で定期的な勉強会を開催しコミュニティを拡充しているとのことです。

当時住んでいた馬本さんからは、「大学での経験とは違い、東京都内に住んで
スタートアップでのインターンシップを行うきっかけや常にあなたは何をできる人なのか?自分が何をしたいのか?を問われた。」と話されていたのが印象的でした。

また他のシェアハウス・大学寮と違い、トビタテハウスならでは特徴として、
①他者に自己紹介をし、自身に関する深い問いを投げかけられる
認知負荷が高い場所なので常に自分自身のキャリアについて考えるきっかけがあり、
結果転職する人が多くなる。

②ダイバーシティに富んでいるので多様性があるが、全員が個を確立しているため
他人を尊重し合う文化がある

③コミュニティを重視しているためトビタテハウスメンバーによる自主的な勉強会や
トビタテハウスを退去した後も卒業生としたアルムナイコミュニティがあり、
継続的に繋がれる。

という特徴が挙げられました。

芦沢先生から投げかけられた、
「トビタテハウスの持つ機能は本来、大学が持つべきものではないのか?
特に国際寮の運営について、自分たちが知っておかなければならないと感じている。
トビタテハウスから提言があれば。」という問いに対して

①ソーシャルキャピタルがあって繋げられる人。
留学から帰ってきた後、持った熱量を行動に
移す学生を応援できる仕組みがあるといい。
特に大学はソーシャルキャピタルがあるのでそのような存在になれる。

②大学生、特に地方の大学生は社会と断絶されているため、
ビジネスに興味があってもその先の行動に繋げられない
留学に行ったOB・OGと学生を繋げられると
熱量を具現化できるのではないか。

③キャリアセンターとは別に心理的安全性が高く
留学に行った先輩と繋げられる場、雑談が
できる場があるといい。特に尖った人、異常な人のキャリアを知れる機会。

といった提言がなされました。

最後に参加者に対して、
中川さんからは「その人の人生が楽しそうかどうか?
もう一個はその人に話にいけば
どれだけ道を持っているか、ハブとなるような人を見つけられるといい。」

馬本さんからは「学生と社会人との繋がりはまだまだ少ないと思う。身の回りの五人の中に
社会人や憧れになるような先輩がいるといいと思う。」

中山さんからは「大学が卒業しても終わりのコミュニティになっている。
大学でもOB・OG会があると思うが
社会人とつながるアルムナイコミュニティ、プラットフォームや
大学でも心理的安全性を確保した相談できる場があるといい」

といったメッセージが送られました。

執筆者
小山楓様(トビタテハウス)