10月23日(土) Session Kのご報告 (Report)

「海外体験を経験・学びに変える事前事後研修とは何か」報告書

発表者
鈴木大樹 (一般社団法人グローバル教育推進プロジェクト(GiFT)シニア・ダイバーシティ・ファシリテーター)
辰野まどか (一般社団法人グローバル教育推進プロジェクト(GiFT)代表理事)

 2021年10月23日の開催された本セッションでは、一般社団法人グローバル教育推進プロジェクト(GiFT)から2名の講師が登壇し、海外体験を経験・学びに変える『事前事後学習』のメカニズムについて、体験者の声も共有しながらご紹介していただきました。
 まず、GiFTが様々な教育機関や自治体と実施している事前・事後学習には、事前・事後研修(1日ずつ、計2日間)のみを行うものとと、GiFTの海外プログラムとセットで、同様に2日間行うもの、という2つの実施方法があることを説明していただき、それぞれ実際に体験した学生2人の感想を聴きました。2人に共通していたことは、自分と向き合うことができること、そして、違う価値観を持った仲間ができることでした。事前学習では、世界とつながる前に自分の中にある想いや気持ちとつながることを大切にします。参加者同士のダイアログを通して自分を知り、相手を知り、プログラムを通して自分は、本当は何を手に入れたいのかを掘り下げ、そのためのマインド・セットを確立します。そして事後学習では、それぞれの国で体験してきたことや学んだこと、それを未来にどう活かすのかを仲間と共有し、次のチャレンジへとつなげていきます。
 次に、上記のような事前・事後学習が成り立つことについて、GiFTが大切にしている3つの柱に関連させて発表がありました。1つ目は、自分や相手を理解し、共に創り、学びを社会に還元する、という、グローバル・シチズンシップ(地球志民)プロセスを取り入れていること。2つ目は、対話(ダイアログ)を通し、多様な価値を探求するストーリー・ベースド・ラーニングを活用していること。3つ目は、プログラムに同行するダイバーシティ・ファシリテータの役割とその育成です。これらの3つがプログラムの中で噛み合うことで、参加者が慣れ親しんだコンフォート・ゾーンから飛び出て、ラーニング・ゾーンでの学びや気持ちを言語化することを可能にします。そして、それが新たな自分自身の未来へのスタート地点になっていくのです。
 このセッションを通して、事前・事後学習によってマインド・セットが作られ、プログラムでの体験が学びとして価値化されることが、地球志民としてグローバルな視点で社会を意識できる一歩になるということを深く理解することができました。海外経験の有無にかかわらず、教育の場において事前・事後学習は学生たちが自分の考えを言語化し、交換し合うことで客観的な意見も取り入れ、多様な価値観を受けれることにつながるという可能性を発見することができました。

報告者
赤尾菜々実 (東洋大学国際学部)