10月23日(土) Session Jのご報告 (Report)

「大学とパートナー団体との“外部連携”の実態と選択肢を知る」報告書

発表者
山本稚子(東洋大学 国際部国際課主任)
西島達也(株式会社JTB 教育第一事業部 営業第一課 高等教育事業担当)
藤本実千代(米国非営利教育機関 SAFスタディ・アブロード・ファウンデーション日本事務局 マネージャー)

 国際教育事業における外部連携について、大学と外部団体の両立場から3名が登壇し、その実態や今後の課題をご説明いただきました。

 まず、山本様からは東洋大学国際部における外部連携の事例が共有されました。派遣や受入、語学学習の様々なプログラムにおいて外部団体を活用しているそうです。コロナ禍で、複数の短期海外派遣がオンライン実施に切り替わりましたが、コストパフォーマンスの良さなどが学生から高く評価されているとのことでした。プログラム提供側はより望ましい形を模索し続けており、オンライン形式に対する学生の意識やレディネスにも変化が見られています。外部連携の主な利点としては、最新情報の入手と提供、人件費の削減、危機管理体制の強化が挙げられる一方、業務委託費の捻出や外部団体との問題が発生した場合の対応などは課題として残存していると指摘されました。続いて、JTB教育第一事業部の西島様からは、豊富な連携実績をもとにサービスの具体例が報告されました。サポート領域は拡大しており、渡航手続きに留まらず、プログラム企画・開発を担うことも多いようです。派遣先や目的については、従来は英語圏への語学留学が主流であったのに対し、近年はインターンシップやフィールドワークへの関心が高まり、ASEANへの渡航が増加していると説明されました。特に強調されたのが、JTBの留学業務総合サポートシステム「RyuGO」で、その主たる特徴は情報の一元管理にあります。これを活用し、渡航手配から現地での危機管理、学生・保護者対応業務等をワンストップで提供するケースが増えているそうです。そして、SAFの藤本様も、同じく外部団体の立場から事例を共有されました。SAFはあらゆる学生に選択肢を提供することを目指し、語学スコアが交換留学の要件に届かない層にも手厚く対応しています。国際的大学ネットワークによる名門校へのアクセスを実現し、学生のモチベーション向上に寄与するとともに、絶えずプログラムの多様化を推し進めているとのことでした。コロナ禍においても、社会の実情や学生のニーズに応じてプログラムが選抜・修正されているようです。戦略的な外部連携に向けた大学への提言としては、外部団体の得意分野を見極めたマッチングの重要性を強調しています。

 最後に、参加者のディスカッションが展開されました。外部連携を最適化するには、外部団体が提供するサービスの質や相場を理解する大学の教職員が必要である一方、ジョブローテーションが浸透する日本の雇用制度では、ノウハウの蓄積が困難との問題が指摘されました。専門性を有する人材を確保するには、処遇の改善も必要と考えられます。さらに、学生の費用負担を懸念する声は根強く、外部連携にハードルを感じている大学も少なくないようでした。課題の洗い出しや費用の調整を効率的に進めるためにも、大学は派遣人数、内容、期間などを含めた具体的な目標設定をもとに外部団体とのマッチングに臨むことが求められます。大学と外部団体はパートナーであるという認識に基づき、責務を共有していく必要性を感じました。

報告者
湊洵菜(東北大学 文学部)