8月26日(木) Session Dのご報告 (Report)

「留学生30万人計画のレビューとポスト30万人の展望と課題」報告書

発表者
太田 浩(一橋大学 教授)
二子石 優(一橋大学 博士後期課程)

本セッションは、留学生30万人計画について振り返り、ポスト30万人に向けた留学生受け入れの展望と課題を各参加者で考え、整理することを目的として行われました。

まず太田氏より、留学生30万人計画の政策的レビューを頂きました。「留学生30万人計画」骨子の概要によると、10万人計画のものと比べて、6省が連携しておこなっていることが強調されています。一方で、政府の留学生支援に関する予算は、2009年から減額され、日本人学生の海外留学支援へとシフトされました。

次に二子石氏より、日本学生支援機構統計資料を中心に、留学生の入学経路と卒業後の進路について、データ分析を元に解説して頂きました。入学経路の観点から述べると、海外からの直接入学は大学院においては顕著に増加しましたが、大学(学部)、専修学校においては、実数は増えましたが、割合は横ばい、もしくは低下していました。また、日本語教育機関・準備教育課程と専修学校において急増したことで、30万人計画の数値目標達成につながりました。卒業後の進路に関しては、帰国もしくは第3国への出国をする者は、専修学校修了者の場合は1割で、特に非漢字圏出身者の少なさが特徴的でありました。国内就職をする者は、日本語教育機関・準備教育課程からが増加し、大学院・大学からのそれと肩を並べるまでになりました。日本語教育機関・準備教育課程から、2018年度には7割強が国内進学をしていました。二子石氏の考察としましては、日本国内での長期に渡る日本語教育及び進学予備教育の必要性の増加、日本語教育機関・準備教育課程を進学準備教育強化の観点から留学生受入れ政策(施策)の中心に据えるべき、留学生の多様なニーズに応え得る日本語教育、進路指導が実施できる体制を構築すべきなどとありました。

その後、再び太田氏より、留学生受け入れにおける大学をめぐる問題について、お話いただきました。定員管理の厳格化により、日本人学生だけで定員が充足している大学は、留学生の受け入れに非積極的になる可能性が生じる為、収容定員外での受け入れや国公立大での授業料自由化の必要性が挙げられました。また、言語・質・連携の問題としては、国際化のもと、英語による授業と、日本での就職促進の為の日本語教育の両立の難しさが挙げられました。就職支援に関する政府の方向性は、日本国内での就職率を3割から5割へ向上させるとあり、留学生就職促進プログラムが行われ、大学と地方公共団体・民間団体が活発に活動しています。しかし、現実では、企業はダイバーシティ・共生という言葉を用いながらも、採用側は日本人化した留学生を求めているという齟齬が生じています。

終盤のディスカッションでは、正規・非正規生のバランスや中国人留学生に頼る状態から、異なるエリアの開拓といった、新たな一手の模索の必要性をご指摘いただきました。また、別の参加者からは、国内就職のための大学による日本語教育の試みの重要性や、授業料自由化による競争力への疑問等の意見を頂きました。

報告者
成毛 楓(東洋大学国際学部)