8月26日(木) Session Cのご報告 (Report)

「これからの国際交流と大学職員」 報告書

発表者:
赤松茂利(早稲田大学 国際部国際課)
石山昭彦(國學院大學 国際交流事務部)
宮澤文玄(学習院大学 学長室)

 8月26日(木)に開催された本セッションでは、新型コロナウイルスの感染拡大が懸念され、オンラインが主流となってきている中で、オンラインを用いた国際交流の現状・課題、そして国際交流に関わる大学職員の行いや展開について、3人のスピーカーにレポートを行っていただいた。

 まず赤松氏より、現在早稲田大学で行われているオンラインを用いた国際教育「Global Online Academic Learning (GOAL)」について、その取り組み内容と早稲田大学の国際部職員がどのような業務を行っているのかを報告していただいた。
 「リアルな留学」か「オンラインを用いた国際教育」か、という対立を克服し、「どちらも」を実現するというコンセプトのもと、プロジェクトが進められている。具体的には、APRUやU21といった国際コンソーシアムや、北京大学(中国)などと連携し、様々なプログラムを展開している。また、アクションプラン(三ヵ年計画)を策定することによって、国際部の職員一人一人がGOALを「自分事」として捉え、取り組む試みを行っているそうである。さらには、どのようにPRを推進していくかが今後重要になっていく。
 コロナウイルスによる環境の変化によって従来からの課題が改めて顕在化したが、変化を誘発し適応するという、大学が国際化を推進する本質も再確認できる。よって、国際交流に関わる職員には、外の視点から組織を批判的に見つめ、正しいビジョンを持ち、組織の慣性(Inertia)が働くメカニズムを理解し調和を図る能力が求められるとのことであった。

 次に石山氏からオンラインを用いた短期語学留学は越境留学の「代替措置」となるのかという考察が報告された。従来の選択肢である越境型の短期留学は外国語力向上、情緒面・異文化感受性への効果があるという調査結果がある。また、2018年に留学した日本の大学生のうちおよそ3分の2が選択していることから、短期語学留学の質の維持、向上をなおざりにはできないと考える。
 現在は消極的な選択肢であるオンラインでの実施について、効果の報告はまだ出揃っていないが、情緒面や異文化感受性については効果の予測が難しいが、語学力の向上はある程度期待できる。また、費用やアルバイト・部活といった理由により、越境型ではなくオンラインの需要があることアンケート結果からわかった。
 よって、オンラインを用いた短期留学は越境留学の単なる「代替措置」ではなく、コロナ後もオプションにしていかなければいけないが、そのためにはモチベーションの維持や多様性のあるプログラムの形成、授業外でのコミュニティ形成といった課題も残っているとのことであった。

 宮澤氏からは、一般社団法人大学行政管理学会(JUAM)の活動と今後の展開を中心に、大学の垣根を越えて国際交流活動に携わる意義について報告していただいた。これまでのJUAM関東地区研究会とRECSIEとの協働を始め、大学の国際交流や国際教育の新しい動きに対応するよう、職員が果たすべき役割と実践事例を幅広い視点から発表され、組織ミッション、ビジョンと職員個々人の能力開発との結びつきの重要性が述べられた。
 また、9月のJUAM研究集会では諸外国における大学職員のジョブローテーションに関する考察を発表する予定であり、日本のメンバーシップ型の雇用システムや新卒一括採用、終身雇用制度などからの移行や、時代の変化に伴う大学職員の今後の働き方について、諸外国との比較を参考に改革に繋げる意義が大きいとのことである。その詳細については、JUAM内の新しい組織として「海外職員団体等調査・連携企画チーム」が発足され、国際的な視点で専門職団体と連携し、今後も取り組みを行うとのことであった。

 最後に全体を通し、学生の立場である私にとって、やはり私自身も渡航型とオンラインではどうしても対立させて考えてしまっていた。オンライン型というものが最近では主流になってきてはいるが、国際交流や留学といった面で考えると、前例が少ないという点においても不安を抱えてしまう学生も多いのではないかと思った。
 そういった学生の現状も大学職員には理解がされていて、時代の変化に適応しながら国際交流のプランを考え続けていることの理解を深めることができた。こういった活動を知ってもらうための広報活動の重要性が高まっていくのではないかと思う。こういった貴重な場に参加でき、有意義な時間となった。

報告者:
赤尾菜々実(東洋大学国際学部国際地域学科)